『ワニくんとパーティーにいったんだ』(原書は2014年)は、『おちゃのじかんにきたとら』や『わすれんぼうのねこモグ』で知られるジュディス・カー(1923〜2019)が、90歳を超えて発表した絵本。
お話にも絵にも、穏やかな晩年の絵本作家らしい優しさがあふれている。
マティは小さな男の子。女王の公式誕生日を祝うパーティーに行くはずだったのに、熱が出たので家で寝ていなくてはならない。
ベッドの周りには、ライオンやワニのぬいぐるみがたくさん散らばっている(これが物語の伏線になっている)。
子守のためにおじいさんが来てくれた。そして、親たちはパーティーのために用意した紙笛を1本渡してあっさりと言う。「じぶんだけでパーティーしててね」と。
Matty said, "I don't want to have a little party all by myself.
And what if I need a drink while you're out?"
Matty's mummy said, "Grandpa will see to it.”
Matty said, "Or what if I need to go to the loo?"
Matty's mummy said, "Grandpa will see to it.”
Matty said, "Or what if there's a big enormous green crocodile hiding under my bed?"
Matty's mummy said, "Grandpa will see to it.”
マティはいいました。「じぶんだけでパーティーするなんていやだよ。
それに、みんながでかけているあいだに、のどがかわいたらどうするの?」
おかあさんはいいました。「おじいさんがめんどうをみてくれるわ」
マティはいいました。「じゃあ、トイレにいきたくなったら?」
おかあさんはいいました。「おじいさんがめんどうをみてくれるわ」
マティはいいました。「じゃあ、おおきなみどりいろのワニがベッドにしたにかくれていたら?」
おかあさんはいいました。「おじいさんがめんどうをみてくれるわ」
両親とお姉さんがあたふたと出かけてしまうと、部屋の中は静まり返る。
おじいさんは新聞を読んでいたが、すっかり眠りこけている。
そのとき、声が聞こえる。「パーティーにいきたい?」
ベッドの下から出てきたのは、大きな緑色のワニ。パーティー用の三角帽子をかぶっている。
マティは翼を生やしたワニの背中に乗って、窓から飛び立つ。
そして、ライオンの王様とお妃様がいる動物の王国でパーティーを楽しむ。動物園と遊園地を足して2で割ったような夢の世界を、マティは思う存分楽しみ、やがて子ども部屋に戻ってくる。
少年がパジャマ姿で子ども部屋を抜け出て飛び立ち、夢の国に行って帰ってくるというストーリーは、ちょっと『スノーマン』を思わせる。でも、物悲しい雪の世界を描く『スノーマン』とは対照的に、夏のお話だし、暑い国に暮らす動物がたくさん登場する陽気な世界。終わりもハッピーエンドだ。
ここで注目したいのが、子守役で呼ばれていたおじいさん。結局、みんなが帰ってくるまで新聞を膝に乗せて寝ていたらしい。昼寝から目覚めた後も、猫(モグにそっくり)を膝に乗せて紙笛を吹いているだけ。
せりふはないけれど、『キョウリュウがほしい』のおじいさんと同様、名脇役としていい味を出している。おじいさんも、夢の中でパーティーに行ってきたのかもしれない。