The Odd Egg
Gravett, Emily
Two Hoots
2016-08-25



へんてこたまご
グラヴェット,エミリー
フレーベル館
2016-05-01



2021年のイースター(復活祭)は4月4日。日付は「春分の日の後の、最初の満月の日のすぐ後の日曜日」なので毎年変わる。
ロンドンではたいていイースターの少し前に、公園の池でカエルが産卵する。わが家では毎年少しもらってきてカエルになる前まで育てるのだが、黒い丸だったのがおたまじゃくしの形になってやがて殻を破り泳ぎ始めるのを見ていると、春の訪れと卵に秘められた生命力を実感する。

卵はイースターの象徴でもある。古代から豊穣の象徴だった卵が、キリスト教ではキリストが墓から出て復活したことを表す。
そして、信者は本来、イースターに先立つ節制の期間、四旬節には卵を食べない(直前の灰の火曜日、別名パンケーキの日に卵を使い切っておく。『パンケーキをたべるサイなんていない?」は多分その頃のお話)。しかし、人間が節制している間も、ニワトリは卵を産み続ける。というわけで、イースターの頃にはたくさんある卵に模様を描いて飾る習慣もある。

さて娘は小学校の最初の学年「レセプション」のとき、イースターを前に「卵」についての授業があり、この絵本『へんてこたまご』を先生から紹介された。「タイムズ」紙書評によれば「卵の物語(egg stories)の最高傑作」とされている。

物語の幕開けには、コマドリやニワトリ、フクロウ、オウム、フラミンゴたちが、それぞれ卵を抱いている様子が描かれる。

All the birds had lαid αn egg.
All except for Duck.
とりたちみんなが たまごをうみました。
カモどんを のぞいて。

なお、このカモどんはマガモで、オスに特徴的な美しい緑色の頭をしているし、原文では代名詞「He」が当てられている。次のページで、カモどんは緑色の斑点のある大きな卵を水辺で見つける。

The Duck found an egg!
He thought it was the most beautiful egg in the whole wide world.
カモどんは たまごをみつけました!
そして せかいいち すてきなたまごだと おもいました。

卵は小さなものから次々とかえり、それぞれの親鳥にそっくりなひなが生まれてきて、元気な産声を上げる。
絵本はこの部分が、コマドリを描いた幅の狭いページから、フラミンゴのフルサイズのページまで、鳥の大きさに合わせてページの幅が違っている。それをめくると次々に卵がかえり、絵が変わっていく仕掛けになっているのが楽しい。
そして、親子はみんな似ている。中でも面白いのが、フクロウ親子だ。さすがに読書家らしく、かたときも『卵図鑑』を手放さない(同じ作者の『オオカミ』でオオカミ図鑑に没頭していたウサギを思わせる)。生まれてきたフクロウのヒナは産声が数式になっているし、さっそく親子で『卵図鑑』を読みながら幸せそうに寝ているところは「カエルの子はカエル」を思わせる。

一方、カモどんの卵はなかなかかえらない。カモどんは編み物をしながら幸せそうに待ち、赤ちゃんの靴下やえりまきを完成させる。そしてある日卵がかえると、生まれてきたのは…

「みにくいアヒルのこ」以上の驚きの展開だが、似ても似つかない赤ちゃんは、手編みの靴下を履いて、カモどんを「ママ」と呼んで慕う。カモどんもフクロウに負けないくらい幸せそうだ。

ユーモアたっぷりの物語からは、「カエルの子はカエルかもしれないし、そうではないかもしれない。どんな親子がいてもいい」というメッセージも伝わってくる。

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